香川県産材を使おう! 香川県の林業の現状

木を育て森林(やま)からまちへ

2019/8/31かがわ木造塾の香川県の林業に関する「木を育て森林(やま)からまちへ」セミナーに参加しました。講師は香川県林業普及協会会長の東川正富さん。東川林業は明治の初めに植林事業を創業。昭和61年に家業を継ぎ、現在4代目とのことです。

 

 

香川県を中心に約120haの森林を所有されているとのことです。120haとは363千坪、東京ドーム約26個分です。うち人工林は50haでヒノキが90%、杉が10%とのことでした。

 

香川県は土質のせいと言われていましたが、杉の質が悪く(黒っぽい)値段が低く、県全体としても、ほとんどの植林がヒノキです。

 

香川県のヒノキの特長は、目が込んだとても質が高い木材ができます。徳島県の三好木材市場でも香川県産材コーナがあって、とても好評とのことでした。香川県は土地がやせているので木の成長が遅く、目の込んだ良質な木材になるとのことです。

 

 

建築資材になるには他県より10年程度余分にかかるそうです。目が込んでいるので強度が高いと思われ、それについては現在ヤング係数等の具体的な数値を実証中とのことでした。

 

森林の管理

森林の維持管理は大変です。東川さんのところでは昭和のはじめからの記録が残っています。

・いつ植林したか

・下刈はいつしたか

・枝打ちはいつしたか、道具はなにか

・除伐、間伐の時期は

現在、電子データ化しているそうです。代々受け継ぐ意義を感じているそうです。それだけではなく、森林GISといって、航空写真と地形図・等高線と構図を一体表示したものを作成して、次世代に引き継ごうとされています。

 

枝打ちの時期は良質な木材を育てるのにとても大事です。春から8月くらいは木が水を活発にあげてくるので、傷をつけると部分的に腐る原因になってしまうとのことです。

 

良質な木材を育てるために間伐もこだわりがあります。

 

 

 

間伐~定性間伐と列状間伐

林野庁が推奨しているコストも安い列状間伐ではなくて、東川林業は定性間伐を行っています。

2,3列ごとに縦に木を切る列状間伐では、山谷側には日が当たりません。

また、劣性木も残ってしまいます。

 

360度均一に日が当たるようにして、良質で真円の樹形の木を作っていくためには、手間のかかる定性間伐のほうが適しています。

 

150年以上の木を残す

東川林業は10年から15年間隔で間伐を繰り返し、150年以上の長伐期施業を目指しています。高齢樹まで残していくと、木は太っていくので量は減りません。150年以上の木を残していくといいます。

 

木は「齢級」で木の年齢を表します。1齢級は5年ですので、1齢級の木は1年生~5年生になります。

香川県は7齢級=35年生が多いとのことですが、全国的には5060年生が多く約15年ほど遅れてついていっている状況です。

 

50年生くらいから建築資材として適してきます。柱は35年生くらいからとれるので、香川県産材を構造体に使用しようと思うと、土台・柱が中心になり、梁等の横架材の供給は厳しいです。

 

梁、桁だと80年生くらいが必要です。だから国産材の梁はあまり見かけないんですね。

35年生で末口16cm3mの柱がとれます。

 

80年生で末口32cm4mの横架材がとれます。

 

 

 

自伐伐採にこだわる

伐採は、自分でする「自伐林業」をしています。家族で必要最小限の林業機械で、搬出、間伐を行っているとのことです。

ほとんどが森林組合に委託して伐採しているそうです。伐採を委託すると、木材は安価なので山にお金が残りません。切れば切るほど赤字。なので、放置林が増えている訳です。

 

木が込み合った森林では、太陽光はほとんど差し込まないため土地がやせ、下草も生えず、根もしっかり張ることができません。間伐をしないと、成長が悪く木が細く弱るだけではなくて、大雨で保水できないため土壌が流れ去り根がむき出しになり、土砂災害を起こしやすい森林になってしまいます。

 

 

伐採も木が水分を上げている時期は避けて11月から3月半ばまでしかしないとのことです。夏場は作業道の整備等をしているそうです。

香川県の林業の現状

香川県の林業の現実は厳しいです。専業でやっている人はほとんどいないとのことです。

林業独立採算で考えると大赤字だそうです。

経済的な価値だけではなく、公益的な価値が高いと尾モルってやっていると東川さんは言われていました。

また、山の所有者の意識が問われる時代だとも。

香川県産材で家を建てられるか?

LCCMやウッドマイルのことを考えると、地産地消で地元の木を使って建物を建てた方が環境負荷は低い。残念ながら、東川林業の木だけを使って家を建てるのは現実的ではないとのことでした。建てると決めてから数年の猶予をもらえるかどうか、現実はそういうことはないと思います。

 

また、土台・柱が取れる山と梁・桁と羽柄材が取れる山が違うので、重機を移動させないといけない。それだけに移動させるとさせると効率が悪くとてもコストがかかってしまいます。

まとめ 香川県産材を部分的に使っていきませんか?

個人的な意見ですが、だからといって香川県産材を使うのをあきらめるのは違うと思います。部分的にでも使っていかないと、香川の山は荒れて廃れていきます。

現在の齢級からいうと、柱・土台から使っていけばよいと思います。事例もあります。供給や納期も問題ありません。

 

また、納期や都合が合えば実現可能です。実際現在東川さんご自身が自分の山の木で自宅を建築中です。

 

現在、県産材を使うと補助金がでます。かがわ県産ひのき住宅助成事業です。ようやく、行政としても県産材の活用に試行錯誤で始まったところです。

 

川上(やま)と川下(施主・設計者・工務店)の間には大きな隔たりがあり、お互いの情報がわかっていない現実があります。

外材依存率90%の香川では消費者はもちろん建築業者にも香川県産材があることを知らない人もいます。

 

川上と川下をつなぎ、地元香川にこんな熱い林業家がいることもわかりました。

 

木造建築に従事するもの、木造住宅を取得する方が山を守ることができるということ、山を知らないといけないと痛感した勉強会でした。