昨今「パッシブ」という言葉や言葉が住宅業界で踊っていますね。
パッシブということばや概念が広がるのは大歓迎!
しかし、間違った使い方をされ、悪い印象がつき廃れてしまうのを危惧しています。
そんな中、九州の猛者でありパッシブハウスジャパンエリアリーダーのSiZEの坂本さんが私にはとても無理なとても素晴らしく、想いがこもった文章をブログに書かれていましたので、許可を得まして転載させて頂くこととしました。
坂本さんいつもありがとうございます。
Sizeさんのホームページ <==とても参考になるスバラシイホームページです
「言葉」というものは、私たちにとって大切なコミュニケーションツールであることは自明なのですが、あらゆるものを気軽に消費する事に慣れきってしまっている私たちは、その「言葉」すらをも軽薄に消費して、時流に乗った流行り廃り(はやりすたり)というものを存在させてしまってきているのもまぎれもない事実です。
パッシブハウス生みの親 ファイスト博士
まず、何よりも「パッシブハウス」という呼称には明確な基準があります。
数字ばかりで申し訳ないですが、冷暖房負荷がそれぞれ年間15kwh/㎡以下、家電を含む一時エネルギー消費量120kwh/㎡以下、建物全体の隙間の表現が日本とドイツでは違いますが日本のC値に換算するとだいたい0.2㎠/㎡以下という今の日本の住まいからすれば、とんでもなく超高性能な住まいになります。
(今年4月の国際カンファレンスでは、再生エネルギーの導入比率を織り込んださらにハイレベルな3段階のカテゴリーが発表されました)
パッシブハウス研究所が開発したPHPPという解析ソフトを使い、計画段階と建設後の実証段階でこの基準をクリアしたと認められたものだけが認定物件として登録されるのです。
つまり、この定義を踏襲すると国内にはまだ10棟あまりのパッシブハウスが存在するのみとなります。
世界中でパッシブハウスは広がりを見せていますが、実際に建設を経験した立場からすると、日本も一日も早くそうなら無ければならないのではありますが、今の日本の住宅業界が簡単に一気にシフト出来るようなものでもないという事は認識していなければならないと思います。
昨年の1月にインスブルック大学を尋ねた私たちに、ファイスト博士はご講義が終わられたばかりなのに別教室をご用意くださって特別にお話をしてくださいました。
そこでまず語られたのが「パッシブハウス基準」というものが、あらゆる検証から導きだされたスタンダードだという事でした。
人種や、気候風土や様々な条件からも、この性能をスタンダードとする事が望ましいという意味の事をおっしゃられました。
日本では、雲の上の超高性能と形容される性能ですが、沢山の統計データやを示してパッシブハウスの生みの親はそう語られたのです。
ここに、地方差による性能の手加減やアレンジはも何も無い、スタンダードだと。
衝撃でしたが、私たちはその講義で腑に落ちました。
「パッシブハウス基準」は性能基準であり、ルールはありますが、工法や材料の指定などは一切ありません。
万人が快適で、消費エネルギーを極限まで少なくして暮らす為の性能基準なのです。これが、全てだと考えれば、「パッシブ」という言葉が闇雲に多用されて、中途半端な性能の住まいが今後もあたかもレベルアップしたかのように温存されるカモフラージュの道具になる事は避けて行かなければなりません。
インスブルック大学への訪問の夜は、博士と夕食をともにする厚遇に恵まれました。
そのときにも、博士は「パッシブハウス」が始まった頃のお話をしてくださいました。
もちろん当時は高性能サッシなど無いからご自分たちで通常の木製サッシに断熱材を貼付けて性能を出したりと大変なご苦労をされたことを名刺の裏にスケッチでディテールを描きながら説明してくださいました。少しずつでも確実に、広げて行く事が大切だとも語られました。